広くて浅い ぐだぐだ日記

自作小説、紙芝居、あったらいいなと思うモノから 季節ネタ、日常生活まで・・たまに社会批判も。

冬の山小屋での … 怪談 or 美談 ?

かなり標高がある 冬の雪山で、
4名の大学生登山パーティーが 立ち往生していた。

山の天気は変わりやすい。
異変を感じたベテランパーティーが、早々に登頂をあきらめ
下山する中、リーダーの市瀬が、
「もうじき雲の上に出るだろうから、きっと大丈夫さ。」
と軽く考えてしまったのが原因だ。

市瀬は今回が 冬山初挑戦だったが、
他の3人は登山自体がほとんど初めてだった。
そして、この 猛吹雪に襲われてしまったのだ。


「オォッ ・・ リィーダー 帰り道 雪に埋まってしまったネ。
ワタシたち ドウやって 帰るのォ?」
留学生のヨンが、歯をガチガチさせながら訪ねた。

「大丈夫さ! 川に沿って下ってゆけば麓には着くはずだよ。」
市瀬が皆を安心させようと、あからさまな作り笑顔を見せた。

「何言ってんのよぉ!
その川も、もう雪に埋まって 360度 真っ白じゃないの!
下手に動いたら、それこそ川にハマるわよっ!」
市瀬の彼女である三和子が、怒りをあらわにした。

スマホの電波も届かないこんな所で、立ち止まっても、
凍えて死ぬのを待つだけじゃないか!」
 市瀬の口から 本音が零れると、
ヨンの妹、ニーナが、体を震わせながら泣き出した。
「イヤぁーッ まだ シニタクないーっ! 寒いーっ!」

「ニーナちゃん。 気持ちで負けちゃダメ! しっかりして。」
三和子がニーナの肩を抱こうと 振り返ると、
遠くに小さな山小屋らしき物が見えた。

「もしかしたら、これで、助かるかもしれない・・」
4人は、残る力を振り絞って、その小屋へと向かった。

近づくと、それは、丸太を四角形に組んだ、
よくある作りの ログハウスだった。

正面から見て、左側に着いているドアを開けると、
中は薄暗く、何か不思議な感じがした。

市瀬は、入口の近くにあるランプに火を灯しながら言った。
「オイルは、朝まで 何とか持ちそうだ。」
凍傷になりかけた手をかざしてみたが、すでに感覚はない。

「あっ!何か 本があるっ!」
ニーナは 入口から奥に見える本棚に向かって直進した。
文学少女の彼女には、本はどんな時でも救いなのだろう。

入口の対角、つまり市瀬から一番遠い所に陣取った三和子は、
そこにあるカップボードの中を念入りに探していた。
「器はあるけど、お湯を沸かす固形燃料は無いわ・・・残念。」

残る1つの角、つまり本棚の対角は、ダイニングキッチン。
そこを物色していた ヨンが、大きな声で叫んだ。
「おォ! 乾パンが沢山あるッ! 食料はダイジョウブ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

灯りのある部屋で、お腹を満たすことの出来た4人が、
ウトウトと意識を失ってしまいそうになった時だった。

入口近くのアンティークが、突然、カタカタと音をたてた。
・・ような気がした。それは 誰かの夢だっだのかもしれない。

背中が、体中が、ゾグゾグする。「寒い」というより「痛い」。
夜になって、さらに気温が下がって来た。
外に出たら、あっというまに凍死だが、
この小屋の中でじっとしていても、朝までには死ぬだろう。

「おいっ、みんな! 寝たら死ぬぞ!」
リーダーとしての威厳を示そうと、市瀬が大きな声で言った。
「体を動かさないと・・ そうだ! ゲームをしよう。」

全員のリュックが1カ所に集められた。
そして4人は、部屋の4つの角に散らばって座った。
「いいか! 俺は今から 全ての荷物を 入口から本棚まで運ぶ。
かなりの重さだ。イヤでも体は温まるだろう。
それが済んだら、本棚の前で俺は腰を下ろす。
替わりにニーナが立ち上がって、荷物を三和子の所に運ぶ。
次に、三和子がヨンに運び、ヨンが俺に運び・・を繰り返す。」

「なるほど! 荷物も人も、ぐるぐると部屋の中を回るのね。」
「ヒトが1周スル間に、荷物は4周! 反時計マワリ!」
「これなら、眠くなる事は無さそうネー。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このようにして、4人は極寒の夜を 乗り切った。
朝日が差し込む頃には、嵐もすっかり止み、視界も良好。
何とか、もと来た道を探し当て、
無事に4人は生還できました とさ。 めでたし、めでたし。

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この話は、これで終わりです。

えっ? タイトルの 怪談って何のこと?
と思ったあなた! 気付いていなかったんですね。

案外、不思議な出来事は、本人の知らないところで
起こっているのかもしれませんよ。

では、補足させていただきます。
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翌日、ヨンから 市瀬に電話が掛かって来た。
声の震えから、相当 動揺しているのがわかる。

「オォ・・リーダー! ひとり足りないよォ!?」
「えっ? 4人で出発、4人で帰着。 誰も置いてきてないぞ。」
「ブログにあのゲーム載せヨウと、図を描いて気づいたネ…。」
「図? じゃあ、紙と鉛筆を用意するよ。」

「マズ、四角形ABCDを書きマス。それ、小屋の見取り図ね」
「玄関にアンティーク(Antique)、突き当たりに本棚(Bookshelf)、カップボード(Cupboard)、ダイニングキッチン(Dining Kitchen)・・なるほどね。」

「Aの角に一、Bの角には二、Cに三、Dに四と入れてミテ。」
「いちせ、にーな、三わこ、ヨン・・か、解りやすいな。」
「ここから ゲームスタートね。」
「最初に、一が荷物をBに移動。」
「次に、二がCにイドウ。」
「そして、三がDに移動・・って、何か問題あるのか?」
「オオありョ。四がAに荷物を運んでAに座る。その後は?」
「Aの処に居た、一が立ち上がって 荷物を受け取り
・・・あれっ? 一はBに居るぞ?」
「ホラ、5人居ないと成り立たない・・。」
「えっ!‥ オレたち以外に 誰も居なかったよな?」

ヨンの側にいたニーナが、受話器を奪って話し出した。
「エーン、こわいよー。アノ部屋 三角じゃなかったよネ。」
「ああ、四角だ。 間違いない。」
「じゃあ、もうヒトリ 誰がいたの・・?」
「俺たちが、顔を見ても驚かない 見慣れた誰か??」
「そんな人が、小屋で待ってるナンテ、ありえなーイっ
・・・でも、帰って来れて ヨカッタ・・。」

市瀬は、そのあと すぐに三和子に電話した。
「おい、三和子。 あの山小屋での事だけど・・・」

説明を聞いて、その不思議さがわかった瞬間、
三和子は、「ハッ」 としたが、
その後は、静かにに深呼吸をするだけだった。

市瀬は続けた。
「なあ、あれって、冬の怪談ってやつかなぁ? 地縛霊とか?」
三和子は答えた。
「あなたって人は・・。ますます愛想が尽きたわ。
何かに助けてもらったっていう 感謝の気持ちはないの?
怪談‥? もし、「談」を付けるんなら ‥ 美談‥ じゃないの?」


※ キャラクター、会話、人間関係、小屋の中の置物 等
  ほとんどが、「脚色」ですが、
  以下が、知人から「実話」として聞いたお話です。

・4人が冬山で遭難しかけた
・四角形の山小屋で、上記のゲームをした。
・生還後「不思議」があった事に気付いた。
・4人とも全く同じ記憶を持っている。
・謎は解けていない。